妹との日々
毎朝6時に起き、2人分の朝食を作るのが僕の日課である。両親は仕事で忙しくめったに家にはいない。それが朝ともなればそんな日は皆無であり、母の料理を朝食に食べた記憶はぼんやりと幼少時に二三思い浮かぶ程度である。僕は小学校低学年の頃から、朝は6時に起きて朝食を作り、学校が終われば買い出しに出かけて夕食を作っていた。朝食ができたら妹を起こして一緒に食べて、夕食の時も同じようにしていた。
ふと、妹と仲良く膝を並べて食べていた時のことを思い出してしまい、胸がチクリと痛むのを感じた。お兄ちゃん子で可愛かった妹も今では中学2年生、そして僕は高校2年生である。僕がかつてそうであったように、妹は反抗期に入り僕の顔を見るなり目を細くして表情を歪め、舌打ちをしてくるのである。
料理が終わり、僕は1人前を皿についで、チュンチュンという小鳥のさえずりを聞きながら1人でそれを食べる。時刻は6時30分、そろそろ妹が起きてくる時刻だと思えば、ドンドンドンと荒々しい足音が階段の方から聞こえてきた。そして妹が階段を降りた所で僕と目があい、いつものごとく僕を睨みつけて小さく舌打ちをした。音は聞こえなかったが、口の動きがまさにそれを表していた。以前は兄を慕う可愛い妹であったが因果応報か、それとも単にそういう時期なのか、今年度に入ったくらいから僕にキツく当たるようになってきた。
僕は朝食を急いで口に入れてお茶で流しこみ、自室に向かった。その途中で妹とすれ違い、僕はその瞬間に背筋を伸ばして前を向き、妹の肩が自分の目線よりも2cmほど下であることを記憶した。そして自室に入り、ドアに、妹の肩の高さの位置にシャーペンで点を付けた。そういうことをしてから、これでは嫌われて当然だなと僕は自己嫌悪した。
僕の身長は150cmと、かなりの小柄である。身長は中学3年生くらいからはもうほとんど伸びていないし、これからも伸びることはないと思う。母は170cm、父は180cmなのにも関わらず、僕だけはこんなにも小さい。それに対して妹のサヤは中学2年生で170cmと、かなりの長身だ。2年前、僕が中3でサヤが小6だった頃に身長を抜かれ、悔しさからしばらくサヤにキツくあたっていたが、それからもサヤは順調に成長し、中1で160cmになり、今年はついに170cmに達した。
そこまで成長してからは、僕はサヤにキツくあたることはなくなった。自分勝手であることは自覚しているが、むしろ、サヤと仲良くなりたいと願うようになった。僕は昔から背の高い女性に惹かれるという性癖を持っていた。多分、母が原因なのだと思っているが、母とはめったに会うことはできない。クラスメートにも、170cmを超えるような背の高い女子はいない。稀に街なかで見かけることはあるが、たいていはヒールで見せかけの長身を再現しているに過ぎない。僕は小柄なのでたいていの女性は自分よりも背が高いが、自分よりも背が高いだけで惹かれるということはまずない。158cmは自分よりは長身であるが、ただの平均身長であり長身女性としてのレアリティはそこにはない。僕は、170cm以上の正真正銘客観的な長身女性というものに惹かれるのである。しかし、そんな女性はめったにいない。
そんな欲求不満をインターネットで慰めていたら、そこに救世主たるサヤが現れたのである。僕は日々成長していくサヤに、次第に惹かれていった。サヤの大きな洋服、大きな靴を見る度に僕の下半身上端はぬるく発熱した。最近、リビングに置き忘れた財布をサヤに手渡しした時に目に入った大きな手を見て、僕は非常に興奮した。憚らずに本心を吐露してしまえば、サヤと一緒の部屋で、色々と比べてみたいのである。身長、手の大きさ、足の大きさ、肩幅などなど、自分とサヤの体格差を全身で感じてみたい。しかし、そんな欲望をサヤに言ってしまえば、おそらく「キモイ」という一言の後に僕らの仲は修復不可能なまでに崩壊してしまうのだろう。そうなってはもう取り返しはつかない。それならば今、束の間の接触にサヤの大きさを感じ取り、記憶し、自室で1人寂しく慰めるのが最良だろうと僕は思うのであり、今の今までそうして自分を慰めてきた。欲求不満を想像力でもってどうにか発散してきたのである。
僕の高校は電車を30分ほど乗り継いだところにある。一方で妹の中学校、僕の母校は徒歩10分ほど。僕は無所属で、家事のために毎日まっすぐ家に帰ってくるわけだが、妹も同様に無所属だ。よって僕は、妹よりも早く家を出て、妹よりも遅く家に帰ることになる。僕は妹の大きな衣服や靴に興奮しているわけだが、それに触れる機会は洗濯の時くらいで、自室に持ち帰ってじっくりと楽しむことはできない。唯一、夜中に玄関で靴の大きさを楽しんだり、生乾きの洋服を夜中の内に取り込んで少しの間楽しむことはできる。僕はリスクを承知で、そんなことをして夜な夜な1人で楽しんでいた。そして、今宵もそれを楽しむべく、夜中の2時30分、草木も眠る丑三つ時を狙って僕は電気を消してそっと部屋を出て、携帯の明かりのみを頼りに階段を下り、リビングに向かいガラス戸を開けて干してある洗濯物からサヤのTシャツを手に取った。シャツは十分に乾いており、思わず口元が緩んだ。シャツを片手に持って再び携帯の明かりのみを頼りにして玄関まで降りた。そして靴箱から妹の靴を取り出した。
僕の靴は22cmだが、妹のは26cmと身長相応に大きい。2種類の靴が並んでいるのは日頃から見る光景であるが、僕はその度に興奮してしまう。4cmの大きさの違いというのは、上から見れば一方がもう一方にするりと収まってしまうほどの差である。僕はそれを回想して、妹の26cmの靴に僕の足を突っ込んだ。内部には、足が暴れるほどの余裕があった。走れば脱げてしまうくらい、ぶかぶかであった。無意識に足先を丸めていたが、それでもぶかぶかであることに変わりはなかった。サヤはこんな靴を毎日しっかり履いているのかと思うと、下半身が脈打つのを感じた。硬化を始めるそれを握り、ゆっくりと上下に動かした。それと同時に僕は足を動かして、サヤの靴の大きさを、自分の足の小ささを楽しみ、硬化を促した。
夜中といってもリスクはある。サヤが起きてくるかもしれないし、親が突然帰ってくるかもしれない。この場で最後までやりたいとの思いもあったが、想定されるリスクと比較して僕は靴から足を抜き出そうとしたが、その時傍らに置いておいたサヤの大きなTシャツが目に入った。僕は性欲に任せて自分のシャツの上からそれを着た。2枚重ねであるがそこまでの窮屈さは感じなかった。袖は僕の手をおおよそ隠し、手先がちょこんと袖から出ていた。このTシャツが標準的な男性用のシャツであることはわかっているが、それを妹のサヤが着ていると思うと僕の興奮は頂点に達し、そのままフィナーレを迎えた。その直後、ついにここまで来てしまったという罪悪感を抱きながら、もしものために用意していたティッシュペーパーをポケットから取り出して丁寧に、証拠を残さぬよう後片付けをした。Tシャツは念の為もう一度洗おうと、洗濯カゴの中に入れた。
一度一線を超えてより高次の快楽を味わってしまったら、もう以前の慰めで満足することはできない。僕は週に二三度玄関で自慰にふけり、170cmのTシャツを買って、それをサヤの私服とみなして自室で着ては興奮するという生活を送っていた。何度かサヤにバレてしまいそうになったことはあったが、演技でどうにか振り切った。
一方で、サヤは段々とかつての優しさを取り戻してきた。朝におはようと挨拶をしてくれたり、僕が料理をしている間に机を掃除してくれたりと、以前の優しい妹に戻ってくれた。と同時に、サヤは成長期である。日々背が伸びていき、目線よりも若干下にあったサヤの肩は気がつけばより高い位置にあり、それからはグングンと上昇していき、やがて僕の頭と同じくらいにまで伸びた。また、目の前には胸があり、サヤと並ぶ時、ここで抱きあえば胸に顔をうずめられるのかと妄想した。足も大きくなったようで、夏休みくらいに27cmに買い替えたと思ったら、年度が終わりを迎える頃には28cmになっていた。僕の足は依然として22cmであり、サヤの靴の隣では小学生の靴のように小さく、実際にそれは紛れもない正解なのである。
サヤは今まで以上に優しくなっていった。今までは兄妹としての事務的な交流しかなかったのだが、以前のように挨拶をしてくれるようになったと思えば、ご飯を美味しいと言ってくれたり、買い物を手伝ってくれたり、高い戸棚にしまってある鍋を僕に代わって取り出してくれたりするようになった。僕はそんなサヤとの接触の度に、サヤとの体格差を全身で感じては密かに興奮していた。
その一方で、日々優しく、距離が近くなっていく妹が、兄として少し心配になった。一緒に過ごす時間が長かったせいか、サヤは昔からお兄ちゃん子であった。サヤに身長を抜かされてからは僕の方からサヤを避けることはあったが、サヤはいつも通り、僕の方に寄ってきたのだった。ここ少し前まではサヤの方から嫌われてしまい、それはそれで寂しく思うものの因果応報であると思っていたが、同時に兄離れの時期が来たのだと安心していた。しかしここに来て、サヤは僕にベタベタしだしたのである。
サヤとの距離は日に日に近くなった。以前は日常生活のついでにサヤと接触するといったものであったが、最近はサヤの方から積極的に接してくるのである。最近では、朝におはようと言うなり、サヤは僕の頭を軽く撫でてきた。子ども扱いされたようで、兄として男として少々の不快感は覚えたものの、そんなものは同時に湧き上がった性欲に比べたら微々たるものであった。しかし、僕はあくまでも兄である。動悸を抑えながら妹のからかいを受け流した。本当はサヤと思いきり触れ合いたい。しかし、それは倫理的にできない。サヤと兄妹であるという自分の身を恨めしく思った。
春休みが明け、新学期が始まる。新学期といえば身体測定である。高校の身体測定は始業式の翌日であり昨日終わったが、中学校がどうであったかはあまり覚えていない。目測では185cmくらいであるが、正確な値が知りたいものだ。今の状況であればサヤに尋ねれば教えてくれるような気もするが、どうすれば自然に聞き出せるものだろうか。僕はそれを考えながら、いつも通り下校中にスーパーに寄り、夕食の買い物をした。野菜が安かったために買いすぎて重くなった袋を両手に持ち、肩にはショルダーバッグを提げて、家に向かう。途中、高校生と思われる女子2人組と合流し、彼女たちは後ろから僕の容姿の悪口を言い始めた。
こういったことは日常茶飯事なので僕はいつも通り無視する。依然として後ろのコンビは容姿の悪口で盛り上がっているが、途端に、タッタッタッと、高い足音がリズムよく聞こえてきた。足音は次第に近づき、僕の後ろで止まったと思えば、背中をドンと叩かれた。急な衝撃に僕は、何歩かよろめいてしまった。
「お兄ちゃんお疲れ! ふくろ持つよー!」
サヤは僕の手から袋を1つ取り上げた。もう一つの重い袋も、ヒョイと持ち上げた。僕は手ぶらになった。片方を持つと言おうと思ったが、あまりに軽そうに袋を持つため、その気が失せてしまった。
「サヤは今帰りなのか? 遅いな」
「うん、なんか進路指導みたいのがあって、遅かったの。あ、ねえねえ、今日測定があって、身長伸びてたの、いくつだと思う?」
僕は下腹部が急に圧迫されるのを感じた。さっきまで悩んでいたことがこのような形で解消されるとは、思いも寄らなかった。
「・・・・・・185くらい?」
「惜しい! 186.3cmだった。去年より16cmも伸びたんだよ」
さらなる圧迫感を覚えた。痛みすら覚えた、このまま失神してしまいそうな勢いだった。
「すごいなあ、サナは。僕は全然伸びないよ」
「えへへ、お兄ちゃんは可愛いから、そのままでいいよ」
チクリと胸が痛むのを感じた。小柄でも兄としてのプライドはある。しかし、はるか頭上からニコリと微笑まれて、その幼い表情とあまりに高い身長とのギャップに、僕のノミのように小さなプライドは吹き飛んでしまった。僕らは雑談をしながら仲良く帰路についた。煩わしかった後ろのコンビは、いつの間にかいなくなっていた。
190cm近い女性との生活というものはあまりに刺激的である。僕は今までのように、夜中にこっそりと起きだして靴に足を突っ込んだり、シャツを通じてサヤの大きさを感じたりしてリビドーを発散させていたが、そんな慰めでは、サヤの理想的なプロポーションに対する激しい興奮を収めることはできなかった。生身のサヤと直接触れ合いたいという欲望を日々募らせ、兄である我が身を恨み、毎夜1人で自慰にふけった。
サヤのスキンシップは日に日にエスカレートしていった。同時に、僕の理性による抑制も、もはや限界だった。僕は大学受験生であり、学校は受験色が濃くなり、それに従い僕は進路について色々と悩み、精神を疲弊していた。サヤに対する欲情とその制止、および将来そして受験に対する不安とに板挟みとなり、僕は兄としての倫理を日に日に失っていった。すれ違いざまにサヤに抱きしめられれば、それを振り払うふりをして体を密着させた。皿を洗っている最中に頭を撫でられれば、言葉ではやめるように言いながらも皿洗いを優先して自分から手を除けることはせず、できるだけ長時間撫でられるようにした。そしてその感触を記憶して自室でもそれを想像の中で再現した。そういうことをしている内に僕の性的欲求はさらに強まり、気がつけば自分からサヤのスキンシップを求めるようになっていた。不適切な癒着であることは百も承知だったが、性欲の前に理性は働かないのである。
ある日、僕は自室で教科書を睨んでいた。いよいよ受験が始まるという時に、僕は教科書の内容すら理解できず、絶望していた。インターネットで調べてもわかったようでまるで分からず、僕は再び教科書を睨んだ。急に、ドアがコンコンと小さくノックされた。僕は瞬時にそちらを振り向くと、サヤが顔を赤らめてドアの隙間から僕の方を見ていた。
「お兄ちゃん、あのね・・・・・・良かったら、一緒に寝ない?」
サヤのスキンシップが日に日に激しくなっていくといっても、あくまで日常生活のとある一場面にすぎず、ここまで直接的な誘いは未だかつてなかった。僕はこのサヤの誘いに少々戸惑った。と同時に、今は忙しい、と思った。しかしながら別の動物である下半身上端の竿は、教科書の解説を反復する僕の脳みそとは別に激しく脈を打ち始めた。そして次第に脳みそまでも、それに支配された。僕の精神はボロボロだった、癒やしを求めていた。
「・・・・・・うん、いいよ。すぐ行く」
「本当? ありがとう!」
サヤはドアをゆっくり閉めた。僕は直ちにパジャマに着替えて枕を抱えてサヤの部屋に向かった。さっきまで働いていた理性というものはもうどこにもなかった。ただ、性的欲求不満を解消したい、サヤという理想の容姿を持った女性と絡みあいたいという動物的で根源的な欲求のみが僕を支配した。
コンコンとノックすれば瞬時にカチャリとドアが開き、目の前にはサヤの大きな体があった。サヤは所謂八頭身美人なるものであり、遠目に見ればその姿はスレンダーと称するべきものであるが、150cmという小柄な自分の目の前に立たれてしまえば忽ちにスレンダーという感じはなくなり巨大と思えてしまう。僕は首を90度近く曲げ、サヤの顔を見上げた。サヤは頬を赤らめて、目を大きくさせて、僕の方を見ていた。
「えへへ、お兄ちゃんかわいい」
サヤはそう言って腕をまわし、僕の腰の辺りで手をつないで僕を包み込み、優しくぎゅっと抱きしめた。僕の背はサヤの肩よりも低く、また肩幅は僕よりもいくらか大きいために僕はサヤにすっぽりと包まれた。また僕の目の前にはサヤの小ぶりながらも柔らかそうな胸があり、僕は顔をそこにうずめた後、サヤに寄りかかり、さらに体を密着させた。そして僕も、サヤを軽く抱きしめた。手のひらがサヤの柔らかいふとももの裏の辺りに触れた。僕の局部は限界まで硬化していたが、それはサヤのふとももの間の隙間で浮いているため、今の状況でサヤに僕の興奮が悟られる心配はまるでないように思えた。
サヤは左手を僕の腰に添えた状態のままで右手を離し、「お兄ちゃん、ちっちゃい」と小声で呟きながら、僕の頭を優しく撫で始めた。僕は昔、サヤの頭を撫でた時のことを思い出し、手を伸ばしてサヤの頭を撫でてみようと思ったが、辛うじて手先が届く程度であった。サヤは悪戯そうに微笑み、背伸びをした。僕の手先は、サヤの顎に辛うじて触れる程度となった。僕も背伸びをしてみたが、当然頭に届くはずなく、額のあたりを触った。僕は背伸びをやめてサヤを軽く抱きしめて、意志の効かない一部の器官を除いて脱力させた。途端、サヤは僕の脇の下に手を入れたと思うと、僕を持ち上げ、空中で抱きかかえた。僕の股間はサヤの柔らかい膀胱の辺りに触れてビクリと反応し、瞬間冷や汗が流れた。しかしサヤは気がついていないのか、それとも興味がないのか、そのまま布団まで運び、僕を仰向けで横に寝かせ、その隣でサヤが寝転んだ。横になった状態で見るサヤも大きく、それは直ちに幼少時に感じた母親の大きさを彷彿とさせ、鼓動がゆっくりになるのを感じた。
僕とサヤは向かいあった。サヤは左手で僕の頭を優しく撫でてきた。僕も右手で、サヤの脇腹の辺りを撫でたが、腕を上げるのが億劫に思えて、すぐにやめてしまった。僕はサヤと手のひらを合わせ、関節が1つ分違うことがわかるなり、サヤはそのまま手のひらを若干丸めて、僕の手を包もうとした。僕が疲れて脱力するとサヤは再び僕の頭を、肩を、脇腹を撫で始めた。そして途端に僕の脇腹の下に右手を突っ込み、反対側を左手で抑え、自分の方に寄せて僕を抱きしめた。
「かわいい、かわいい」、サヤはそう言いながら、僕をぎゅっと抱きしめた。サヤの首の下に僕の頭は収まり、その状態でサヤは僕の背中の真ん中の辺りを思いきり抱きしめた。僕の硬くなった局部はサヤのふとももの間に押し付けられた。さっきまでならこの状況に興奮していたと思うが、今はもうそれどころではない。股間は相変わらず硬くなって痛みすら覚えるものの、それ以上に胸が苦しくなった。サヤの力は身長に相応しいものであり、それで僕のひ弱な胴体を絞められればどうなってしまうのか・・・・・・サヤは更に力を強めた。サヤはただ無邪気に甘えているだけなのかもしれないが、僕の体の奥ではキュッという音がして、痙攣を始めた。しかしそんな震えもサヤには感じないらしい。視界がぼやけて、僕は夢の世界へと入っていく。サヤの声を聞きながら、僕の意識は薄れてやがてプツンと途切れ目の前が真っ暗になった。
あの一件から、僕とサヤの距離は近すぎず遠すぎずといったものになった。毎日おはようと言い、行ってらっしゃいと言い、ただいまと言い、おやすみと言い、時には寂しいと言ってお互い慰め合う。もちろん、気の乗る時乗らない時があるが、各々のその場での最大公約数的なつきあいかたをした。僕は兄として一応は倫理的に適切な関係を心がけていたが、あのようなことがあった仲である。僕らは度々スキンシップを楽しんだ。186cmという高身長を、サヤは更に伸ばしていった。益々理想的になっていくサヤを前にする度に僕の性欲は弾けそうになるのだが、さすがにそればかりを優先できる身分ではない。僕は家にいる時間を少なくし、1日の大半を自習室で過ごすようにした。自習室が休みなら、近所の市営図書館で過ごした。そこも休みなら、諦めて家で過ごし、時にサヤとのスキンシップを楽しんだ。幸いにもサヤは奥手なようで、僕とのスキンシップをじゃれ合いのようにしか思っていないらしく、それから一線を超えることはなかった。また、妹も受験生である。試験日が近づくにつれて、そういう関わりは次第になくなっていった。
罰が当たったのかそれとも未来の破滅への救いの手なのか、受験の結果地方行きの決まった僕は出発前夜、今まで以上に時間をかけてスキンシップをした。妹の背は伸び続け、今では200cmのドアを軽くくぐって出入りするほどである。こんなに背の高い女性を未だかつて見たことはないし、男性でもいないかもしれない。そんな人と交わう事のできる喜びを深く噛みしめる一方で、僕は、兄という血縁上の身分をこの上なく呪った。そして濃密なスキンシップを終えた翌日、僕は故郷を離れた。それから1年間、僕はサヤと会うことはなかった。勉強、人付き合い等々、新生活にもがいていた。それでも性欲は健全であり、インターネットで慰めようとはするものの、サヤ以上に理想的な女性などめったにおらず、リビドーは溜まる一方で放出されるところを知らず、僕は欲求不満を募らせた。背は伸びたか、元気か、顔が見たいなどと自分の欲望を仄めかしたメールをしてみるものの、サヤからの返事はいつでも『帰ってきてからのお楽しみ』であった。
ほぼ1年が経過し、僕は故郷を尋ねた。サヤは元気か、学校にはちゃんと通っているかなど、色々聞きたいことはあったが、サヤの身長はいくつあるのか、僕はとにかくそればかりを気にしていた。去年は200cmくらいだったはずである。さて、1年でどれくらい伸びたのか、15cmほどだろうか、いや、さすがにそこまで成長期が続くわけ無いか。そんなことを考えていたらあっという間に故郷に到着していた。実家に近づくにつれて僕の鼓動は速まり、同時に股が熱くなった。
僕は一息置いてから、インターホンを押した。ドタドタと階段を降りる音が聞こえた。サヤの声がすると同時に玄関のドアがゆっくりと開いた。
-FIN
創作メモ
過去作「比べ合い」よりももっと差分表現を豊かにしてほしいと言われ,書きました.私としては差分表現はかなり自信があったので初めは戸惑いましたが,自分の作品を見返す良い機会になりました.今まではただRsimを用いて差分表現をしただけでしたが,今回は身長差のある人間が目の前に立った時に,男として兄としてトールフェチとして何を感じるのかということを意識して書きました.そのために文体もさっくりしたものではなく,重いものにしました.読みにくくなることを気がかりでしたが,どうでしょうか.